有機酸コーティングプロジェクト
~高い付加価値で、他社に真似できない製品を~

有機酸コーティングプロジェクト
~高い付加価値で、他社に真似できない製品を~

今までにない用途を開発し、圧倒的な強みを生み出せ

FUSOが国内で唯一、製造・販売し、世界的にも高いシェアを占めている「リンゴ酸」。
そのリンゴ酸やクエン酸などの有機酸(果実酸)に
「高い付加価値を付けて、他社に真似できないモノを作ろう」
そんな発想から始まったのが、有機酸コーティングプロジェクトだ。
中心を担っているのが若手社員たち。
試行錯誤の末、製品化というゴールがようやく見えてきた。「登山で言うなら、7合目」という彼ら。
世界を視野に入れた挑戦が続いている。

  • ライフサイエンス事業部 所属

    2018年入社 大学院理学研究科修了
    H.R.
  • ライフサイエンス事業部 所属

    2017年入社 大学院薬学系研究科修了
    F.T.
  • ライフサイエンス事業部 所属

    2018年入社 大学院農学研究科修了
    M.Y.

入社4カ月目にして始まった未知への挑戦!

有機酸は食品や飲料の酸味料としてはもちろん、保存性を向上させたり、味わいや食感を調整させたりと、さまざまな機能を持つ食品添加剤として用いられている。今や食品加工や化粧品開発などに不可欠であり、工業や農業分野でも幅広い用途を持つ。その有機酸においてFUSOはすでに国内外のトップメーカーとしての地位を築いているが、世界的な価格競争は激化する一方だ。「そこで有機酸を独自の方法でコーティングして本来の形状や性質を変化させることで、今までにない用途を開発し、新しい展開ができないかというのが、プロジェクトの狙いです」と、3人の中では先輩格のFが話す。F自身がこの開発に関わることになったのは、新入社員研修が終わった入社わずか4カ月目の頃。「一緒に取り組まないか」と声をかけてきたのは、コーティングという開発テーマを温めていた、当時、入社4年目の先輩だった。話を聞いたFは、「当社の強みである有機酸を活かしつつ、新規性がある面白いテーマだ」と半ば自ら志願し、プロジェクトが始まった。

知見もノウハウも専用設備もない。
足で情報を稼ぎ、課題を一つずつクリアしていく日々…

とはいうものの、課題は山積みだった。まず、FUSOにはそもそも有機酸をコーティングする手法やコーティングの材料に関するノウハウや知見が全くといっていいほどなかったのだ。「まるで雲をつかむような話ですよね」と苦笑するF。試作に用いる設備さえ研究室には十分になく、まず取り組んだのは、設備・機械メーカーの展示会に参加するなどして、必要な設備を検討・選定することだった。コーティングのノウハウや知見についても、文献調査や外部のセミナー、講習会への参加、顧客や専門家へのヒアリングによって、情報をイチから収集していった。ようやく設備が揃ってからは実験の条件を検討し、試作しては顧客にサンプルを出して評価してもらう日々が続いた。良い結果はなかなか得られなかったが、「若いうちから大きな仕事を任せてもらえると聞いていたことが、入社動機の一つでもあったので」と、Fは意気揚々と目の前の課題に取り組んだ。

格闘の末、光が見えてきた

ようやく顧客から高い評価を得られるようになってきたのは、1年目が終わろうとする頃だった。「何十回と試行錯誤した末でしたので、客観的な評価を得られた喜びはひとしおでした」とF。加えて、当初狙っていた用途とは別の用途への適用の可能性も見えてきた。同時に、量産化に向けての製造設備の検討や、顧客に提供するための評価方法の確立という新たな課題点も出てきた。ここで、入社1年目のHとMが新たにメンバーに加わり、開発が加速していくことになる。

新メンバーが加わり、開発が加速

メンバーが増えたことで、製造設備の選定・導入や必要な情報取集は協力しつつ、それぞれの得意分野を活かして役割を明確にし、課題に取り組むという体制が整った。化学系出身のHは、化学の知識を活かして分析・評価方法の確立に取り組んだ。また、コーティングに使う素材になじみのあったMは、実際に形にしていく手法や有機酸とコーティング素材の相性などの検討をメーンに担っている。「メンバー間でも、さまざまな意見やアイデアを積極的に出しあった結果、食品用途での有機酸コーティングについての評価方法が確立できたことは、プロジェクトの大きな進歩です」とFが話す。

FUSOの開発姿勢が、自由な発想を後押し

開発が行き詰った際は、それぞれが顧客先に出向いてヒントやアイデアをもらうことも、しばしばだという。「すべてがチャレンジングですが、外部や他部署と関わりながら、自分たちの意見や考えを反映させていけるやりがいは大きいです」とHとMは口を揃える。このように、若手が責任感に押しつぶされず、のびのびと仕事に取り組めるのには、訳がある。FUSOではこうした新規開発の場合、あまり開発期間に縛りをかけていない。「もし縛りがきつければ、できることが限られ、典型的なことしかできなくなってしまいます。自由にやらせてもらえるからこそ、全く新しいことにトライでき、実際、うまくいったこともたくさんあります」とF。「論理的思考で提案や意見を述べれば通りやすく、ノーと否定されることもありません」とHが続ける。

生産までのゴールラインを定め、いざ頂上へ!

年齢の近い若手が和気あいあいと意見を交わして研究に没頭するのは、まるで大学の研究室のようだ。しかし、やはりそこは大学とは違う。メンバーが肝に銘じているのは、「基礎研究のすそ野を広げるにしても、生産までのゴールラインをしっかり見据えて、計画を進めなくてはならないということ」だという。「少しでも早く製品化を実現したい」という想いは、共通の願いだ。
現在は、有機酸へのコーティングの複数の工程のうち、1工程が量産化の検討に入った段階。「ようやく雲の向こうに頂上がうっすらと見えてきた状態ですが、課題点がはっきりしてきたので、スケジュール感を持ってさらに開発を加速させ、頂上を目指したい」とFはいう。先行している海外メーカーの製品よりも、データとして能力的に勝っている試作品もあることが、モチベーションをさらに高めている。営業と研究開発が合同で開くミーティングなどを通して、社内的にもプロジェクトの注目が高まり、「ライフサイエンス事業部の事業の柱に育てていってほしい」という期待の声も聞かれるようになった。
実は有機酸へのコーティングはヨーロッパが先行しており、日本をはじめアジアは出遅れている。開発が成功すれば、食品業界の発展が著しい東南アジアを中心に、世界に向けて発信できる技術になる――。頂上のまたその先を目指した奮闘はこれからも続いていく。

Comment

F.T.)「プロジェクトはまだ道半ばですが、一定の成果が得られたのは、バックグラウンドが違うメンバーが集まり、それぞれの知識や経験を存分に発揮できたことが大きいと思います。メンバーの関係性が良く、自由な議論を行える雰囲気があることも、開発を推進する原動力となっています。」

H.R.)「基礎研究開発から設備化検討まで幅広くプロジェクトに関わり、お客様はもちろん、生産や品質保証など他部署との関りを広く持てることが、当社での研究開発の魅力。本プロジェクトでは、まさにその魅力を肌で実感しています。今後は、食品用途だけでなく、医薬品などほかの用途へも有機酸コーティングを展開できるような評価方法を確立していきたいですね。」

M.Y.)「もともとはある特定の顧客を念頭に置いた開発でしたが、営業とのコミュニケーションによって、海外顧客からの引き合い、評価につながりました。部署を超えて情報共有ができていることもFUSOの強みだと思います。本プロジェクトでは、用途拡大を見据え、それぞれの用途に応じた有機酸とコーティング材料の選択のバリエーションを広げていきたいと思っています。」