植物用高温ストレス耐性向上剤
開発プロジェクト
~農業分野への本格進出をかけて~

植物用高温ストレス耐性向上剤
開発プロジェクト
~農業分野への本格進出をかけて~

今までにない用途を開発し、圧倒的な強みを生み出せ

国内では人口は減少傾向だが、世界に目を向ければ、
今後の人口増加に伴い、市場が拡大すると見られている分野の一つが農業分野である。
夏場の高温下のストレスにさらされても、農作物が元気に育つ――。
そんな植物向け製剤の開発がこのプロジェクトのミッションだ。
自ら考え、開発した製品によって農業分野に本格的に進出し、
製品が多くの農家に使用される日を夢見て――。

  • ライフサイエンス事業部 所属

    2016年入社 大学院理学研究科修了
    M.S.
  • ライフサイエンス事業部 所属

    2018年入社 大学院農学生命科学研究科修了
    F.K.

農家が夏場に抱える問題を、
自分たちの製品で解決したい

FUSOが取り扱う多数の化学製品は幅広い分野で使用されているが、農業や畜産といった一次産業にはまだ本格的に進出できていない。進出の第一歩となる製品として、Mらが開発に取り組んでいるのが、植物に投与することで、暑さへの耐性を向上させる製剤の開発だ。開発のシーズは二人の先輩が温めていた発想だった。「当社がかねてから注目していたある天然物由来の物質に、植物のストレス耐性に関わる遺伝子を活性化させる機能があることわかっていました。これを何とか農業分野に活かせないかというのが、先輩の発想でした」とM。
とはいえ、FUSOの製品は食品分野で使用されるものが多く、食品や食品添加物に詳しい人はいても、農業分野における専門家はほとんどいなかった。そこで、「まずは発案者である先輩とともに肥料や農薬のメーカーを訪問して、どんなニーズがあるのか市場調査を行うことから始めました」。調査を通して、「夏場にゴルフ場の芝が枯れて困っている」「酷暑続きで作物の実がつきにくくなった」など、暑さに関わる課題があることが判明。「開発が成功すればきっと現場の課題解決につながる製品として広まっていくはずだ」という展望がモチベーションを高めていった。

市場調査から始め、イチから必要なものを見定める

しかし、そんな矢先、先輩が異動になり、プロジェクトはMが一人、後を引き継ぐことになる。「採用面接のときに面接官に言われた『若いうちから責任ある仕事を任せますよ』という言葉を思い出しました」。まだ先輩を頼りにしたい気持ちもあったが、自分が主体となって考え、動かなければ何も進まない状態になったのだ。引き続き、肥料・農薬メーカーを回り、どんな実験データが有用なのか、また、製剤を固形化するのか粉末状にするのか、はたまた、原料として出すのか、農薬や肥料といった最終製品として出すのか…。一つひとつ見極めていった。
また、どこで実験を行うのかという課題もあった。見出した機能性物質を植物に投与して、実際に熱への耐性が高まるのかを実験する設備が自社にはなかったからだ。そこで、Mは大学の出身研究室を訪ねて共同研究を依頼し、快諾を得て実験を進めることになった。さらに、研究室内にヒーターや蛍光灯を使って、高温下で植物を育てられる小部屋を自ら作り、サンプルづくりと効果の検証を始めた。

2年目にして製品の採用が決まり、第一目標をクリア!

何とか実験で有用なデータを取ることができ、現場試験はこの開発に興味を持った農薬資材メーカーがやってくれることになった。「屋外での試験は、四季のある日本でいつから始めるのか、同じ夏場でも冷夏であれば効果が出ても、猛暑下で同様の効果が出るかなど、難しい点がいくつもあります。そのため、すぐに結果は出ないと考えていました」。ところが、あるメーカーの現場試験でゴルフ場の芝への効果が検証される。そこからは製造委託先でのスケールアップもスムーズに進み、製品の採用が決定。製品はまもなく上市される見込みだという。「原料の調達から管理、植物への効果検証、製剤化検討、特許手続き、営業までコーディネートしてきたので、採用になったときの達成感はとても大きかったです」とM。「しかし、すべて私一人の力で製品採用にこぎつけられたわけではありません。製造の知識が豊富でいつでも相談に乗ってくれた上司、販売につながらない中、辛抱強く開発を続けさせてくれた経営陣、また他部署の方の協力などのおかげもあって、農業資材メーカーへの採用という第一目標がクリアできました。」

次なる目標に向けた第二ステージが開幕

製品の採用が視野に入りかけた頃、入社まもないFが開発に加わった。というのも、「この開発プロジェクトの最終目標は「拡販によって農業分野への本格進出の足掛かりを作ること」だったからだ。そのためには、ラボレベルでさらに厳密かつ確かな植物への高温ストレス耐性を検証し、多くの農薬・肥料メーカーに、農家などでの現場試験をしてもらえるようなデータとして提供する必要があった。明らかに熱へのストレス耐性が高まっているというデータがなければ、製品コンセプトに興味は持ってもらえても、その先にはつながらない。Mはそのことを充分すぎるくらい経験してきた。
Fが取り組んだのは、顧客メーカーに提供する「より厳密な」データを取るための実験設備作りの検討だった。「お客様により納得いただける正確なデータを取るには、室内ではなく、太陽光のもとで植物を育てることが大事」と考え、会社の屋上にホームセンターで買ってきたビニールハウスを設置した。その中で野菜の苗を育て、製品サンプルの濃度や投与回数などを変えてデータを取った。実験を続け、ようやく一定の条件では、投与してない植物と比べて、明らかに炎天下のビニールハウス内で元気に育つとことが実証された。

小さなプラスを積み上げ、一歩一歩前に進んでいく

しかし、「現在は1種類の作物だけしか検証できていません。作物の種類や収量との関係を考慮して、お客様に興味を持ってもらえるようなポジティブなデータが出るよう、実験をブラッシュアップしていきたい」とF。二人が今、目指しているのは、実験データを持って、次の夏までに少しでも多くの農薬・肥料メーカーを訪問し、現場試験をしてもらうことだ。「安定して良い結果が得られるまでに、どのくらいかかるかわかりません。しかし、自分たちにできることを地道に取り組むしかありません。小さいプラスを重ねながら、一歩一歩でも前に進み、会社の売上に貢献するような製品に育てていきたい」と二人は口を揃える。細かい実験データを取るFと、顧客や他部署からの意見を吸い上げるM。互いの得意分野を活かした研究開発は、これからも続いていく。

Comment

M.S.)「当社では、入社1年目から自ら考えて実験を組み、実行することが求められるため、決められた実験をこなすだけといった時期はありません。とはいえ、放任主義ではなく、上司からは適切なアドバイスがあり、後は自由にやらせてくれます。また、努力や成果に応じた評価をしてもらえるので、やりがいがあります。」

F.K.)「当社での研究開発はとにかく自由度が高く、このプロジェクトでも実際に手を動かしているのは自分一人です。一部上場企業ですが、ライフサイエンス事業部の開発部隊はベンチャー企業のような雰囲気があり、私たちのような入社1~2年目の若手が活躍しています。」