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フィラー

高速通信技術を支える低誘電シリカ

高速通信技術を支える低誘電シリカ

IoTや生成AIの普及などにより、さまざまなサーバー・端末を通じて膨大なデータが行き交う時代となり、それに伴って高速通信の需要が高まっています。このような高速通信の実現においても、実はシリカが重要な役割を担っていることをご存知でしょうか。

高速通信の実現に必要なこと:高周波信号の活用と減衰抑制の両立

はじめに、高速通信の実現には、「信号の伝達速度が速いこと」が重要です。 信号には周波数が低いものと高いものが存在しています。周波数は「1秒間にどれだけ波が振動するか」を示す値であり、Hz(ヘルツ)という単位を用います。周波数が高いほど信号が細かく変動するため、同じ時間で伝達できる情報量を増やすことが可能です。 一方で、高周波信号は低周波信号よりも減衰しやすく、伝送損失(伝送ロス)が大きいという性質があります。そのため、高速通信においては、高周波信号を用いると同時に、減衰を抑えることが重要です。

高周波信号を扱うにあたって重要なこと、高周波基板の重要性

5G通信や車載レーダーなど、高周波信号を扱う電子機器では、「高周波の交流電流(信号)が配線や基板材料の影響を受けながら、どのように伝わるか」が性能を左右します。多くの電子機器に搭載されているプリント基板(PCB:Printed Circuit Board)は、絶縁体の基板上に集積回路(IC:Integrated Circuit)やコンデンサなどの電子部品を銅配線で接続した構造となっており、配線を通じて信号が送られています。したがって、プリント基板は高周波信号の伝達において非常に重要な役割を担っており、信号が減衰しにくい材料を選定することが重要です。

信号減衰のメカニズム

通信経路において、電気や光、音などの信号が減衰する度合いのことを「伝送損失」と呼びます。伝送損失は「誘電損失」「導体損失」「散乱損失」の3要素の和によって導き出すことができます。

誘電損失

誘電体(絶縁体)の内部で、エネルギーの一部が熱となって失われる現象のことを指します。誘電損失の大きさは誘電体の誘電特性によって決まっており、誘電正接(Df)や比誘電率(Dk)が小さいほど損失も小さくなります。

導体損失

基板上の信号線路(配線)として使われる導体の抵抗や表皮効果によって、エネルギーの一部が導体内部で熱となって失われる現象のことを指します。導体損失を改善するには、モジュール化やパッケージの3次元化などによる線路長の低減や、線路幅の増加を通した低抵抗化が求められます。
※表皮効果:導体に交流電場を加えたとき、導体の中心部より外側の方に多く電流が流れる現象のこと。

散乱損失

導体に高周波電場が加わったとき、導体の表面、あるいは基板との界面の粗化部分で電気信号が散乱し、熱として損失する現象のことを指します。表皮効果の一部であって導体損失に含まれるとする考え方も存在します。

高周波基板におけるシリカの役割

電子部品実装前のプリント配線板(PWB:Printed Wiring Board)には、絶縁体として樹脂材料が使用されており、高周波用途向けに低誘電率・低誘電正接のエポキシ材料開発が進んでいます。樹脂材料には各種添加剤(フィラー)を添加することが一般的であり、高周波用途では樹脂の誘電特性を高める、あるいは低下させない添加剤が必要とされています。
フィラーには、高分子フィラー(芳香族ポリアミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維など)やセラミックスフィラー(シリカ、アルミナ、窒化ホウ素など)など、様々な種類が存在しています。しかし、「低誘電率と低誘電正接の両立」には課題があり、高分子フィラーは比誘電率が低いものの誘電正接が高い一方で、セラミックスフィラーは誘電正接が低いものの比誘電率が高いという傾向があります。そのため、「低誘電率と低誘電正接の両立」という課題が生じます。加えて、高周波基板では信頼性との両立も重要であることから、高分子フィラーの場合は耐熱性・熱膨張性などの課題が生じます。

このような背景から、低誘電率と低誘電正接の両立を目指したセラミックスフィラーの開発が進んでいます。中でも、シリカはもともと誘電正接や比誘電率が低いことに加え、下記に記載のさらなる低誘電化・低誘電正接化を図るための技術が存在していることから、特に中空シリカが高周波用途向けフィラーの1つとして注目されています。

低誘電正接化

表面処理によって極性要素(水分、水酸基)を除去することで、低誘電正接化を図る。

低誘電率化

中空構造を持つことで内部に空気(=誘電率が最も低い物質)を含ませ、低誘電率化を図る。

さらに、シリカは素材が持つ特性を生かし、寸法安定性の向上や熱膨張性の低下、耐熱性の向上を目的として採用されることもあります。

シリカが支える高速通信の未来

このように、シリカは高速通信の実現を支える大事な役割を担う高周波基板においてさまざまな役割を担っており、まさに縁の下の力持ちといえるような存在として日々の通信を支えています。誰かにデータを早く届けたいと思った際は、データの送信と同時にシリカの活躍に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

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