フィラー

身近なプラスチックやゴムなどの素材は、丈夫なようにも見えますが、実は単独では強度や耐熱性が弱いという弱点を持っています。そのため、この弱点を補う役割として、「フィラー」が埋め込まれています。実は、フィラーとしてシリカが色々な箇所に使用されていることをご存知でしょうか。

フィラーは、「強度や各種性質の改良、またはコスト低減のためにプラスチックに添加される比較的不活性な物質」と定義されています※注1。かつてはコスト削減を目的とし、高価な樹脂の代わりに安価なフィラーを添加することで体積のかさ増しを行う使い方が一般的でしたが、現在は樹脂単体では持ちえない新たな価値を付与する目的での添加が増えています。たとえば、剛性や耐衝撃性といった力学特性、熱膨張率や耐熱性といった熱特性、絶縁性などの電気特性、さらには光学特性や難燃性まで、幅広い効果が期待できます。
※注1:ASTM International (世界最大・民間・非営利の国際標準化・規格設定機関) による定義より。
フィラーの組成としては、難溶性塩、天然複合酸化物、合成複合酸化物、酸化物、水酸化物、窒化物、炭素系、ポリマー(有機)系など、非常に多岐にわたる種類のものが存在しています。
粒子径の観点では、数μm~数10μmのフィラーはコストダウンや増量剤としての用途が多い一方、10μm以下のフィラーは粒子径が小さくなることで比表面積が大きくなり、母材との接触面積が広がることから、機能性付与目的での使用が多くなっています。ミクロンサイズ(100nm~10μm前後)のフィラーは加工・分散などの面で扱いやすい一方で、ナノサイズ(10nm~100nm前後)のフィラーは少量添加でも、力学特性(耐衝撃性、強度)や熱特性(熱膨張率の低下)、光学特性(透明性)の改善など、顕著な特性変化が期待されます。
また、球状フィラーは局所的な応力集中が起きにくく、耐衝撃性や熱膨張率制御の効果が高い一方、板状・針状・繊維状フィラーは成形安定性・加工性に課題があるものの、強度改善効果が大きいことが特徴です。

シリカは、機能性付与を目的とした代表的な酸化物フィラーの一つです。特に、エレクトロニクス分野では半導体チップを保護するための「モールド封止材」用途にてエポキシ樹脂等と混ぜる形でシリカが使用されています。
エレクトロニクス製品の心臓部である半導体チップは、非常に繊細で外部からの衝撃や湿気、熱に弱いことから、モールド封止材によって保護されています。しかし、エポキシ樹脂のみで耐熱性を高めると硬くもろくなりやすく、強度と耐熱性の両立が課題です。
そこで、エポキシ樹脂に非晶質シリカ※注2を混合し、熱膨張係数(CTE)を低減させることで、温度変化による破損を防いでいます。また、シリカ(無機材料)とエポキシ(有機材料)は表面エネルギーの差が大きく、相溶性の課題が生じやすいことから、適切な官能基を粒子表面に入れたシリカを使用することで相溶性を改善する工夫も重要です。
※注2:シリカには「結晶(非合成)」と「非結晶(合成)」の2種類が存在し、「非結晶(合成)」は熱膨張率が低く寸法安定性も高い一方、「結晶(非合成)」は熱膨張率が高い。

半導体封止材では、モールド封止材に加えて「アンダーフィル」においても、シリカフィラーが使用されています。
アンダーフィルとは、接続信頼性の向上を目的として、フリップチップ工程※注3で基板に実装された半導体チップが電極端子から外れないよう、基板と半導体チップの間へ充填する液状硬化性樹脂のことです。基板・半導体チップ材料とアンダーフィルの熱膨張係数の差が大きい場合、温度変化によって反りが生じやすくなります。そのため、反り防止および寸法安定性向上を目的として、シリカフィラーがよく使用されています。
アンダーフィルはバンプ間への充填に使用するため、半導体封止材以上に微細なシリカが求められます。さらに、接続信頼性の担保には絶縁性も重要であることから、金属不純物が少なく高純度であることも、シリカフィラー選定において非常に重要です。
※注3:反転させた半導体チップを回路基板へ熱圧着、もしくは超音波圧着することで、半導体チップと回路基板側の電極同士を直接接続する工程。

フィラーは、素材の弱点を補い、必要な機能を付与するための重要な役割を担います。シリカも代表的なフィラーとして使用されており、母材となる素材の可能性や機能的価値を広げる、重要な材料です。今回ご紹介した半導体封止材(モールド封止材、アンダーフィル)に限らず、エレクトロニクス以外の分野においても、フィラーとしてのシリカの存在価値は大きく広がっています。
もし、あなたが手に取った製品の丈夫さを実感したときは、その裏でシリカが素材の弱点を「埋めて」強化している可能性に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
