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酸化防止剤の手引き|トレンド、導入のコツ、開発課題など

酸化防止剤のトレンド

近年の食品業界において、「酸化防止剤」に関する二つの注目トレンドをご紹介します。

フードロス防止意識の高まり

食品ロス削減は世界的な課題として、喫緊の対応が求められています。
酸化によって発生する風味の劣化、変色、退色などは、たとえ消費期限や賞味期限内であっても消費者の購買意欲を損ね、結果として棚落ちや返品、廃棄へとつながってしまいます。
この主な原因の一つが、食品中の油脂や色素の酸化です。
とりわけスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでは、外観のわずかな変化が販売機会の損失につながるため、酸化による品質劣化はフードロスの隠れた大きな要因となっています。

海外展開による販売期間の長期化

グローバル化の進展により、国内の食品メーカーが海外展開を検討するケースが増加しています。
海外輸出では、輸送期間に加えて販売期間も考慮する必要があり、国内販売よりもはるかに長期の品質保持が求められます。
インバウンド需要に対応する土産物など、全国販売や海外旅行客の持ち帰りを想定した製品では、より高い品質維持が重要になります。
酸化防止剤は、輸送中の酸化劣化を防ぎ、製品が消費者の手元に届くまでの品質を保つ上で不可欠なものです。

酸化防止剤の導入前に考慮すべきこと

酸化防止剤を導入する際には、試作段階で見逃されがちな重要なポイントがあります。

試作段階で見逃されがちな「酸化抑制の持続性」

製品開発の試作段階では、小ロットかつ短期間での検証が中心となります。
この段階で効果が確認できても、量産時や長期保存条件下では酸化抑制効果が持続しない場合があります。
また、従来のビタミンCやビタミンEを単独で多量に添加しても、十分な賞味期限延長が難しいことがあります。
酸化防止剤を選定する際には、効果の有無だけでなく、長期的な持続性を評価することが重要です。

酸化要因となる構成成分の把握

食品の酸化は、構成成分によってさまざまな要因で発生します。主な要因は以下の通りです。

脂質の酸化

食品中の脂質は活性酸素によって過酸化脂質やアルコール、ケトン、アルデヒドなどの二次生成物を生じ、風味劣化や物性変化、酸価上昇を引き起こします。

タンパク質の酸化

タンパク質中のアミノ酸のうち、システインやメチオニンといった含硫アミノ酸は酸化されやすく、酸化分解してメルカプタン類・スルフィド類・ジスルフィド類といった不快臭原因物質を生じます。
これらの硫黄化合物は、ごくわずかな量であっても強烈な刺激臭として感じられるため、風味劣化につながります。

水分活性の影響

水分活性(Aw)は酸化反応の進行に大きく影響します。
特に脂質の酸化は、Aw 0.30.7の中程度の水分活性域で最も抑えられることが知られています *1
これは、水分が少なすぎる場合は酸素との接触により酸化反応が進みやすく、多すぎる場合は微量成分や溶存酸素の影響を受けやすくなるためです。

*1:食品学(新スタンダード栄養・食物シリーズ5)(第2版)・株式会社東京化学同人

金属イオン・酵素の影響

食品中にごく微量に存在する銅や鉄などの金属イオンが触媒として働き、酸化反応が促進されます。
有機酸はこれら金属イオンをキレートし、触媒作用を低下させることができます。
さらに、酵素の存在も褐変や風味劣化などの品質変化につながります。

食品企画・開発現場でよくある失敗

酸化防止剤の導入時、食品企画・開発現場でよく見られる失敗事例を紹介します。

事例1:期待したほどの効果が続かない

従来の酸化防止剤を多量に添加しても、賞味期限を十分に延ばせないことがあります。
これは成分の安定性や食品中での分散性に課題があるためです。
たとえば、一般的に水溶性の酸化防止剤、ビタミンC、チャ抽出物などは還元速度が速くすぐに自身が消費・分解するため、数日~数週間保管する冷蔵・チルド食品に利用されます(即効型)。
一方で、脂溶性の酸化防止剤、ビタミンE、ローズマリー抽出物などは還元速度が遅くゆっくりと作用することから、数ヶ月~数年保存する長期食品に適しています(遅効型)。

事例2:加熱・光の影響で酸化防止能力を失ってしまう

食品の製造工程での加熱や陳列時の光によって酸化が過度に進行することで、酸化防止剤成分の消費が加速し、その効力が想定よりも早く失われることがあります。

事例3:多量添加による高コスト化・色味への影響

高い酸化防止効果を得るために、一般的な酸化防止剤を多量に添加すると、製造コストが大幅に増加するという課題があります。
また、植物由来成分の酸化防止剤は素材自体の色調が強いことが多く、多量に添加すると着色が目立ち、製品の外観に大きく影響する場合があります。
そのため、外観品質の保持を優先せざるを得ず、十分な効果を得られる添加量まで増量できない、という課題に直面することも少なくありません。

事例4:過剰な添加で逆に酸化を促進

単一成分のみで構成される酸化防止剤を過剰に添加すると、かえって酸化を促進する場合があります。
特に、ビタミンCやビタミンEを多量に添加すると、マグロなどに含まれるミオグロビンの褐変を促進するケースも報告されています。

事例5:苦味など風味への悪影響がでてしまう

酸化防止剤の中には特有の味や臭気があり、食品の風味を損ねて苦味や異味・異臭として感じられることがあります。
食品本来の美味しさを維持しながら酸化を防ぐことは、食品開発における大きな課題です。

おいしさはそのまま、FUSOの酸化防止剤

FUSOでは、これらの課題を解決するために独自技術を活用し、「オキシナジー™」と「キプカロン®」シリーズを提供しています。

食品の風味を邪魔せず、抜群の酸化防止力を発揮する「オキシナジー™」

オキシナジー™は、「酸化から守る力( Anti-Oxidation)」と「相乗効果(Synergy)」を組み合わせた名称の通り、強力な相乗効果による優れた酸化防止効果を持つ粉末製剤です。

使用例:ホワイトチョコレート

相乗効果による強力な酸化防止

酸化抑制の特長が異なる「ビタミンE」、「ビタミンCパルミテート」を厳選して複合化、さらに、酸化防止効果を高める「果実酸®」も厳選配合しています。
これにより、「ビタミンE」の長寿命化を達成し、より持続感のある酸化防止効果が得られます。

風味への影響が小さい

製剤臭(ビタミン臭)を低減し、乳化剤も不使用のため、食品の風味に与える影響が少ない点が特長です。

シンプルな食品表示

食品表示例は「酸化防止剤(V.E、V.C)」など、シンプルです。

高い分散性

常温の水にも均一に分散でき、コスト面でも優れています。
また、分散性が高いため、脂溶性成分、水溶性成分のいずれにも酸化抑制のアプローチが可能です。
チョコレート、冷凍つくね・冷凍ハンバーグ、ローストビーフ、カロテノイド色素、焼き菓子、乳製品、牛肉ステーキなど、さまざまな食品で効果を発揮しています。

素材の色をそのままキープ、本来の美しさを長く保つ「キプカロン®」

キプカロン®シリーズは、「Keep」「Long」「Color」をコンセプトに、食品本来の色を長く保つために開発された酸化・褐変防止製剤です。

キプカロン®FR

ビタミンCと、変色防止効果に優れた「果実酸®」を組み合わせ、酵素的褐変を抑えます。
カット野菜(じゃがいも、なす等)、カット果物(バナナ、桃、リンゴ等)、アボカド、根菜類など、さまざまな食材の褐変防止に効果を発揮します。

キプカロン® T

緑色野菜のクロロフィル色素や、畜肉・水産加工品のミオグロビンの変色抑制に優れた製品です。
緑色野菜、牛肉、魚肉(マグロ、ブリ、カンパチ)などの変色防止に効果があります。

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