Sustainability

サステナビリティの実現に向けて

中期経営計画“FUSO VISION 2025”

2025年度(20263月期)までを、『更なる飛躍のための足場固めと新規事業創出・第三の柱構築への挑戦のための5年間』と位置づけ、中期経営計画 “FUSO VISION 2025”(計画年度:2021年~20255ヶ年)を策定し20215月に公表いたしました。当社の製品群はサステナビリティな社会実現に向けた時代要請に応えるものであり、大きな成長機会を迎えています。事業環境の変化への対応と新たな価値の創造に挑戦し続けることで、中期経営計画のサブテーマである『社会課題の解決に貢献するFUSOであるために』を実現してまいります。

当連結会計年度は、ライフサイエンス事業で販売数量が増加し、電子材料事業で半導体市況の回復の影響を受けたことで、前連結会計年度と比較して売上高17.9%増加、営業利益が46.4%増加するなど、大きな成長を遂げました。2025年度の計画は、売上高の増加は見込まれるものの、市況の影響もあり、中期経営計画を下回る見込みですが、当社は経営方針として掲げた「既存事業における拡大する需要の取り込みと着実な対応」「新規事業・分野への投資・挑戦」「持続的成長を支える 経営基盤の強化(SDGsへの取り組み)」に沿って、引き続き施策を実行してまいります。

マテリアリティの特定

当社は、2021年5月に、中期経営計画(2022年度3月期から2026年度3月期までの5ヶ年)を発表するにあたり、マテリアリティを特定しています。社会価値・経済価値、どちらも創造することができる企業であるために、どのような課題に取り組むべきかを議論、検討を重ねました。

<目指すべき企業像とマテリアリティ(重点課題)>

当社の事業規模は決して大きくありませんが、グローバルかつニッチな市場におけるトップシェアを獲得することにより、収益力をあげています。食と半導体を中心とした主要製品群を通じて、当社は人々のくらしの豊かさと持続的な未来に貢献できると考えております。また現状に満足することなく先進的な技術開発を推進し、Innovationへの挑戦と第三の柱により企業として更なる発展を目指していきます。

■マテリアリティの特定プロセス

特定プロセスにおいては、各所管部署で「当社の事業にとっての重要性」と「社会にとっての重要性」をマトリックスにして検討し、取締役会で議論のうえ決定しました。

<マテリアリティに対する主要な戦略>

マテリアリティに向けたガバナンスとして、3つの主要戦略の中で実現を目指していきます。また、当社の事業活動そのものは、社会課題解決や産業発展とつながっています。事業戦略のベクトルはSDGsへの対応を意識したものとなっており、各事業部は3つの主要戦略に合わせた取り組みをおこなっています。

拡大する需要の取り込み、着実な対応 持続的成長を支える経営基盤の変化 新規事業・分野への投資・挑戦
  • ●鹿島事業所への大型設備投資で需要増加へ対応
  • ●東西に生産拠点を設置し、レジリエンスを向上
  • ●国際事業部の新設と海外事業強化
  • ●各海外拠点による中国・東南アジア市場への対応
  • ●原単位の削減
  • ●電子材料分野向け高機能材料の開発
  • ●果実酸コンビナート構想による大阪工場の機能集約と強化
  • ●次世代リーダーの育成
  • ●働き方改革の実行
  • ●フードテックに関する提供価値の創出
  • ●成長性ある第三の柱構築

マテリアリティと社会的課題への各事業部の取り組み

【ライフサイエンス事業部

海外事業展開を推進するとともに、安全操業、安定生産を継続し、研究開発、品質保証、販売の体制強化、新規製造設備の着実な立ち上げによる供給力の強化に取り組みます。また近年注力している新製品開発において、早期戦列化の推進、並びに市場環境の変動に伴う課題への適切な対応によって、さらなる売上および利益の拡大に取り組んでまいります。

本年度、“高純度有機酸”アプリシャス内製化設備が完成しておりますが、この設備により、電子材料関連市場の継続的な伸長を見込んだ需要を取り込んで行きたいと考えております。当該製品の品質管理体制を水平展開することで、国内外の市場における品質保証をさらに強化し、安定した製品を供給することで持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速してまいります。

■今後の成長戦略

世界的な人口増加や近年の緊迫した国際情勢を背景に、食糧不足への懸念は依然として根強く残っています。食料自給率の維持・向上は喫緊の課題である一方、世界情勢の影響を受け、窒素、リン、カリウムといった主要な化学肥料の価格高騰が続いている状況です。こうした中、作物の増産を図るためには、化学肥料への依存を軽減しつつ、土壌の改良を進める手法の一つとして有機酸の活用が今後ますます重要となると予測されます。
また、国際的な持続可能な開発目標(SDGs)の一環として、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体のひとり当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロス削減が掲げられています。当社はフードテックにより、食品ロス削減に貢献すべく今後も進めて参ります。
同時に、健康の観点から「食」の重要性はこれまで以上に高まっていくことが予想されます。有機酸の機能性を追求し、健康面でも人々の生活向上に貢献できればと考えます。
ライフサイエンス事業部では、有機酸およびその応用製品を活用し、持続可能な社会の実現に向け、食と健康の向上に寄与することを目指して、全力を尽くしてまいります。


今後の成長戦略

■ライフサイエンス事業部のサステナブルな社会を支える取り組み

●一次産業を支える
有機酸は、土壌中の金属イオンと錯体を形成する等高い反応性を持っていることが知られており、植物による養分吸収や有害元素の解毒作用に関与していることが明らかになってきております。有機酸は土壌中のリンを可溶化して植物が利用しやすい形に変え、リン酸の減肥に応用できる可能性を秘めています。また、クエン酸をはじめとする有機酸は生物の代謝系に深く関係する物質であり、植物や土中微生物の生育によい影響を及ぼすことが考えられており、肥料や農薬とはまた違うアプローチにより、農作物の安定した生育と収穫を通じて食料不足の問題解決に貢献していきたいと考えています。
バイオスティミュラントは、植物に対する非生物的ストレスを制御することにより気候や土壌のコンディションに起因する植物のダメージを軽減し健全な植物を提供する新しい技術です。当社は「ある天然物由来の活性成分」に着目し、それにより植物の高温ストレス耐性が向上することを明らかにし、実用化を進めております。高温による収量低下や枯死、品質低下などを軽減する効果を有し、農家の収益性の向上に寄与します。

●食品ロスの低減を支える
当社は有機酸や機能性素材を利用して、複合製剤を研究開発することで、使いでが良く日持ち向上効果が得られるフードテックの技術を通じて、食品業界にとって避けては通れない食品ロスの問題に貢献する取り組みを続けております。微生物による加工食品の腐敗・変敗を抑えることはもちろん、酸化防止機能を有する有機酸の利用により、果物や野菜の褐変などの変質を抑えることでもご活用いただいております。

●健康を支える:食を通じた健康へのアプローチ
クエン酸には、“疲労感の軽減”の機能性表示がシステマティック・レビューを含む届出書類によって認められております。またグルコン酸にはビフィズス菌を増やす効果があることが知られており、またin vitroの実験では近年話題の短鎖脂肪酸を増やす効果があることも確認されております。当社は、さらに研究を進め、有機酸の持つ健康への可能性を拡げていき健康的な食生活の部分でこれまで以上に役立ちたいと考えています。

【海外事業】

アジア地域や北米の需要に対応していくことにより、中期経営計画最終年度の海外売上高比率の目標値を50%としています。2025年4月よりライフサイエンス事業部に国際部を新設し、海外子会社5社を管轄することになりました。これにより販売管理や製品の一括管理を実現させ、ライフサイエンス事業利益を最大化できるよう各社との連携を図ります。新規開発品につきましても現地製造、技術サポートを進め、海外での拡販を目指すとともに、既存品についても国内外で生産体制の見直しを図り、効率的な事業運営を進めます。

■地域別の状況

ライフサイエンス事業、電子材料事業ともに、海外での売上を大きく伸長させることは当社の成長には欠かすことのできない要素です。
中国では、青島扶桑精製加工有限公司のテストキッチンや上海食品調味料開発センターを活用することによって、中国国内でのFFAビジネス(※)を更に拡大していきます。
タイのFUSO(THAILAND)CO., LTD.では、タイ国内のみならず、経済成長が著しい周辺国での営業活動を強化しており、各国のローカル食品におけるFFAビジネスを成長させていきます。
米国PMP Fermentation Products, Inc.では、米国唯一のグルコン酸類メーカーとしての供給責任を果たし、北米で拡大する需要を確実に取り込み、シェア維持・拡大に努めてまいります。
また電子材料事業の主力製品である超高純度コロイダルシリカのアジア地域および北米への輸出が、海外売上高比率の向上に寄与しています。
(※)果実酸の特徴を活用したビジネス

2025 年3 月期

地域別売上高の推移

地域別売上高の推移

【電子材料事業部】

伸び続ける半導体産業を支えるべく、生産供給体制の拡充、新製品開発と早期戦列化、並びに市場環境の変動に伴う課題への適切な対応によって、さらなる売上および利益の拡大に取り組んでまいります。

電材・市場環境と将来予測

●世界の半導体デバイス市場予測
世界の半導体市場はこれまで、産業需要の増加やPC、スマートフォン、クラウドをはじめとする情報インフラの技術開発と拡大により、需要の増加と技術革新が同時に進展してきました。現在では、生成AI、5G通信、IoT、自動運転技術などの進化を通じて、サステナブルな未来を支える重要な基盤として、半導体の役割がこれまで以上に高まっています。これらの技術革新により、エネルギー効率の向上や資源の有効活用が可能となり、環境負荷の削減が期待されるとともに、私たちの生活をより豊かで便利なものへと変えていくことが見込まれます。このように、半導体デバイスの需要は今後ますます拡大し、私たちの生活に欠かせない存在となると同時に、引き続き重要で成長性のある市場となっております。

■社会インフラを支える取り組み

脱炭素社会の実現に向けた電気自動車(EV)の普及や、エネルギー管理の高度化を支える人工知能(AI)技術の進展により、半導体市場の成長が加速しています。特に、低消費電力で高性能な半導体デバイスの需要は、グローバルなサステナビリティ目標を達成する上で不可欠な要素となっています。半導体は、身近な電気製品から社会インフラを支える各種製品に至るまで幅広く利用されています。また、地政学的リスクを含む世界情勢の変化により、サプライチェーンリスクなどの問題が浮き彫りとなり、半導体産業の重要性が改めて認識されています。

●未来を支える
半導体市場は、技術革新の原動力であるだけでなく、持続可能な社会の構築を支える重要な産業基盤として、今後も大きな成長が期待されています。当社は、次世代のグリーンテクノロジーを支える半導体技術のための素材開発を通じて、環境負荷の低減と持続可能な未来の実現に向けて貢献してまいります。

●高度な半導体産業を支えるFUSOの技術
当社の金メダル製品のひとつ『超高純度コロイダルシリカ(Quartron®)』は、半導体の製造過程で使用される研磨剤の主原料として使用されています。より高度になっていく半導体分野において、ナノレベルで粒子の大きさ、形状をコントロールできる、独自の技術を持っていることは当社の強みです。
半導体は、高性能化・低消費電力化を実現するため、微細化、多積層化、そして高集積化が進んでいます。その製造工程の中でも、特に高度な技術が求められるCMP(化学機械研磨)工程では、半導体の回路パターンを傷つけることなく、表面を平坦に仕上げることが必要です。この工程に欠かせない素材として、当社の『超高純度コロイダルシリカ(Quartron®)』は、世界中のお客様に広くご採用いただいています。

CMPスラリー市場規模予測

CMPスラリー市場規模予測

■需要増加を支える生産体制および研究開発体制の整備

サステナブルな未来の実現に向けて、さらなる技術の向上はもちろんのこと、製品を欠かすことなく提供できる体制を整えることが、当社の役割であると考えています。そのため、研究開発体制の整備、需要増加への設備投資とレジリエンスを備えた生産開発体制の構築を進めています。具体的には、研究開発拠点として、神戸研究所、東京研究所と2つの拠点を有しており、神戸研究所では、超高純度コロイダルシリカ(Quartron®)の更なる高機能化を実現するとともに、半導体分野で培った超高純度コロイダルシリカ(Quartron®)の技術を、化粧品・医療・バイオ分野などの機能性素材の開発へ展開し、人々の暮らし・豊かさの向上、持続的な未来に貢献し続ける製品開発を行っております。また、東京研究所ではIoTの礎となる5G/6Gに代表される高速通信・省電力化に貢献する中空シリカパウダー(MiralicaTM)の製品開発を行っております。
生産面では需要の拡大に応えるだけでなく、現在の生産を担う京都事業所に加えた災害に強い2拠点体制として、2023年4月から鹿島事業所での超高純度コロイダルシリカ(Quartron®)の生産ラインが稼働しました。またその先においても、2024年10月に京都事業所、2025年7月に鹿島事業所の追加の設備増強を実施し、2022年度比で約1.5倍の生産能力となりました。

電材・整備

生産・開発拠点体制

第三の柱構築に向けた投資戦略

ライフサイエンス事業や電子材料および機能性化学品事業に続く、第三の柱となる新規事業を確立することは、未来の当社の成長には必要と考えています。社会的な課題を解消する素材・化学技術を追求し、投資・スケールアップなどを通して当社のソリューションを提供しながら第三の柱構築に取り組んでいます。

ファンド等を含む投資イメージ

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