世界全体がサステナビリティに向けて取り組みを進める中では、事業継続リスクと事業創出機会への考慮が不可欠です。当社の事業や製品群はグローバル化が進んでおり、国内ばかりでなく海外でのサステナブルな社会への取り組みにも適合して行くことが当社の企業価値向上や強い競争力にも繋がっていくと考えています。
当社はIPCC「1.5℃特別報告書」を踏まえて気温上昇などによる気候変動対策を経営課題の一つとして認識しております。ガバナンス、戦略、リスクマネジメントについての現状は下記の表のとおりです。CO₂排出量の取り組みについての測定はまだ国内事業会社にとどまっていますが、サステナビリティ委員会では事業活動におけるCO₂排出量を報告し、原単位削減の取り組みを進めています。(※現在のCO₂排出量と原単位への取り組みは、こちらに記載しています)
■当社の取り組み状況と現在の考え方
ガバナンス 気候関連のリスクと機会に関する組織のガバナンス |
|
---|---|
戦略 気候関連のリスクと機会がもたらす当該組織の事業、戦略、財務計画への現在及び潜在的な影響 |
|
リスクマネジメント 組織の気候関連リスクの特定、評価、管理方法 |
|
指標と目標 気候関連のリスクと機会を評価及び管理する際に用いる指標と目標 |
|
国内事業会社のScope1・2の排出量の管理にとどまっていますが、2023年12月開催のサステナビリティ委員会でCO₂排出量算出ソフトウェアの導入を決定し、現在国内事業会社のScope1~Scope3の算出に取り組んでいます。
当社の製品群は持続可能な社会の実現に必要なものが多く、現在取引先からの要請に応えるために設備投資を続けています。そのため、当社のCO₂排出に対する取り組みは当面、原単位の削減に留まる見込みです。2023年6月にはISSBによる開示基準が公表されました。今後日本国内での議論に注視しつつ、2025年度からは、Scope3に准ずるグループ会社を含むCO₂排出量の管理体制を整備し、CO₂排出量削減への取り組みの具体化を目指しています。
当社は、現在気候変動リスクに対応するため、原単位の削減に取り組んでおります。グループ会社を含むCO₂への対策基盤が整う予定である2025年度以降にCO₂排出量に対する具体的な戦略を策定することを目指します。
区分 | 期間 | 取り組み | |
---|---|---|---|
これまで | 2021年度まで |
Scope2 ① |
|
短期 | 2022年度~2024年度 |
Scope2 ② Scope3 ① |
|
中長期 | 2025年度以降 |
Scope3 ② |
世界情勢や将来予測の情報を収集・分析した上で気候変動がもたらす当社におけるリスクと機会を洗い出しました。
個々に記載する移行リスクとは、低炭素経済への“移行”に関するリスクです。また物理的リスクは、気候変動による“物理的”変化に関するリスクとして記載しています。ウクライナ情勢や東アジアの地政学的リスクなどの影響も踏まえ検討しています。
種類 | 当社で想定されるインパクト | 財務上の 潜在的影響 |
||
---|---|---|---|---|
物理的 | 機会 | 生産拠点分散によるレジリエンス向上 | 高 | |
リスク | 風水害・海面上昇による施設破損/物流の混乱 | |||
移行 | 政策・法規制 | 機会 | 半導体需要増/半導体周辺企業への支援/海外半導体メーカー誘致 | 中 |
リスク | 炭素課税等の導入/CO₂政策決定の遅れ/排出権取引市場の創設 | |||
技術 | 機会 | 追加設備投資の要請/半導体の微細化・多層化/食品加工技術需要 | 高 | |
リスク | 取引先ニーズの高度化と技術革新 | |||
市場・評判 | 機会 | 利益確保によりカーボン対策強化 | 高 | |
リスク | 成長重視への低評価/CO₂取り組み遅延によるサプライチェーンからの排除 | |||
経済安保 | 機会 | 半導体需要の増大/世界的な人口増による飲料・食品加工ニーズ増加 | 中 | |
リスク | 原料調達不安/地政学リスク |
●メリット<機会>への対応
ライフサイエンス事業部ではフードテックを活用し、食品ロスの課題への対応を通じてCO₂排出量削減に貢献できる製品群や、人々の健康に寄与する製品群を有しています。これら製品群について、国内市場にとどまらず海外展開においても商機を拡大していきます。また、研究開発や産学官連携等によりフードテックへの取り組みを強化します。
●デメリット<リスク>への対応
鹿島事業所の設備投資をはじめ、コスト競争力のある生産体制を整えています。供給能力の強化に加え、原材料を適正価格で確保できる生産体制を構築しています。また、CO₂排出量については、原単位の引下げや未活用の技術により対応していきます。
メリット<機会> | デメリット<リスク> | |
---|---|---|
1.5℃シナリオ |
●賞味期限対策ニーズ |
●原材料の調達不安 |
4.0℃シナリオ |
●賞味期限対策ニーズ |
●原材料の調達不安と価格高騰 |
●メリット<機会>への対応
世界における半導体需要は、地政学リスクへの対応を模索しながら今後も右肩上がりが予想されています。最先端半導体の生産は気候変動対策でも重要な位置づけにあり、当社も供給責任を果たすために、鹿島事業所第1期工事を23年4月に完工し、鹿島事業所第2期工事及び京都事業所の追加設備工事を実施、東西生産拠点のレジリエンスが高い生産体制を整えています。
●デメリット<リスク>への対応
半導体産業はサステナブルな社会を目指していく中で重要な位置を占めます。そのため原材料の高騰には柔軟に対応できる可能性が高いと考えていますが、まずは、社内コスト削減を実施しつつ、環境負荷低減を推進し、ゼロエミッション化にも注力していきます。神戸研究所、東京研究所とともに今後の半導体製造技術の変化にも対応しつつ、省エネに貢献できる新規素材開発を推進して参ります。
メリット<機会> | デメリット<リスク> | |
---|---|---|
1.5℃シナリオ |
|
|
4.0℃シナリオ |
|
|
当社では損害保険会社と連携し、国交省・自治体のハザードマップなどを参考に、定期的に災害の被害想定額を算出しています。
また、損益の影響についても被害想定額を算出しており、当社では損益への影響をコントロールするために営業利益影響額の一定割合を損害保険でリスクカバーしています。財務への影響は今後も定期的に見直して、気候変動における財務インパクトを想定可視化して対応していく方針です。
2022年に算出した被害想定と営業利益影響額は下記のとおりですが、損害予想額および営業利益影響額ともに損害保険により一定額をリスクカバーし、財務に与える影響をコントロールしています。
■被害想定見込額
被害想定対象 | 被害想定見込額 | 営業利益影響額 |
---|---|---|
風災・ひょう災・雪災 | 15億円 | 12億円 |
水害 | 44億円 | 37億円 |
■算出式
気候変動による税制面の変更やカーボンプライシングのなかでも当社の製品群は社会ニーズに適合しており、変化に対応できると考えています。2025年までの最大影響額は約10億円と想定していますが、大型設備投資などによる増収効果などによる収益により吸収できると見込んでいます。
項目 | 考え方と取り組み方針 | |
---|---|---|
移 行 リ ス ク |
政策及び法規制 |
|
サステナビリティ等の開示 |
|
|
GHG排出量の管理 |
|
|
その他 |
|